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「コジ・キ印 127」★私的小説風妄想生活日記★9月26日『青年ナイフ』

毎晩の儀式の如く、男は刃物を喉元に突き立てている。
あと、ほんの少し力が加われば、晴れてその生涯を終わらす事が出来る。
大袈裟に言えば、生と死の間にいるのだ。
毎晩々々何度も何度も、その状態で自問自答を繰り返す。

『死ぬ?やめとく?どうする?まだまだやりたい事も残ってるよな〜あ?そういや今度友達と逢う約束もしてるし…、まあ、取り敢えずは今日はやめにして、明日考えよー!うんうん!そーしよーそーしよー!』

ガッチガチに硬直した筋肉から、少しずつ力を抜き、ようやく喉元から刃物を離し、手から刃物を離す。

(ふ〜う…、我が事ながら客観的に見ると尋常ならざる光景であるな…)


朝起きてデイケアに行き、午前のプログラムの話し合い。

「はい皆さん、今日のお加減はどないですか?」

と、スタッフのK氏。

「じゃあ、○○さんから」

「今日はサイコー!!」

(朝っぱらからテンション高ぇなぁ…)

「おっ!どないしましたん!?」

「今日は幻聴も聞こえんかったし、ぐっすり寝れたから、いつもより調子ええねん」

「ほお、それはええ事やね」

「じゃあ…、次はお隣りの…」

と、今の気分を質問された。

「…………最悪デス」

「あれまっ!どう最悪なん?」

「………死にたいデス」

シ〜〜〜〜〜ン……。

「それは、具体的にどういう…?」

「考えるのに疲れたのと、生きていたくない気分デス」

「何をどう、考え込む事があるんですか?」

「初めは昔の嫌な事がフラッシュバックで襲ってきて、そのあとはつまらん事を色々考えて、最終的に虚無になってて、気が付いたら刃物を喉元に突き付けてる状態デス」

この発言で周りの患者さん達の、これまでの自殺未遂経験やら、それに準ずる話題が飛び交った。
死にかけた経験を明るく笑いながら話す人もいれば、重た〜い調子で話す人もいるのだが、この日、この場で一番暗〜いこの男の耳には何も入って来なかった。
正直、

(うるせー)

という負の概念だけが残った。


昼休みになり、皆が弁当を食っている時に、男は一人で公園の便所に小便をしに行った。
用を足し終えて便所から出て来ると、スタッフのM女史が煙草を吸っていたので、

「不良や〜、怖〜ぁ」

と、囃し立てた。
それから少しだけM女史と雑談をしていたのだが、

「さっきの話し合い聞いてた〜?」

「うん、まあ…」

「あんな事言わんかったらよかったわ〜」

「…………………」

「…………………」

「これは私の個人的な意見やけどな、私は個人の命って、その人だけの物じゃないと思うねんな?もし貴方が突然この世からいなくなったら、悲しむ人はたくさんいると思うねん」

「そーなんかな〜ぁ」

「少なくとも、私は悲しい」

そのあと煙草を一本吸ってからデイケアルームに戻った。


午後からのプログラムはソフトボールなのだが、折しもの大雨で急遽バッティングセンターに行く事になった。
午前中の虚無感もあって、今日はパスしようかどうか迷っていたのだが、浮かぬ顔をした男の顔色を見たK氏が、

「バッティングセンター行こな?」

と、半ば強引に誘ってくれた。
バッティングセンターでバットを振り回し、ボールをひっぱたくと、幾分かスッとした気分になった。

この日は都合良く、K氏との相談日だった。
内容はやはり今朝の事。
「何で死なんとあかんのでしょうね?」

「何ででしょうね?僕もよお解りません…」

「何か、コレといった理由とか…?」

「う〜ん…、理由…」

まあ、あると言えばあるのだが、

「……特に、ま、しょーぉもない事ですわ…」

「じゃあ、何でその、しょーもない事で死なんとあかんのです?」

「僕にも、よお解りません、ただ、何と無くっていうか…、自分でもこんなしょーもない事で死ぬんは阿呆らしいな〜ぁって気もあるんですけど、ていうか、『死』という言葉には何の抵抗も無いんですけどね、『自殺』って言葉が浮かぶと、何か暗いな〜って気持ちになって、それでまぁ一応生きてるワケでして…」

「成る程ねぇ、じゃあ裏を返せば、冷静な自分も居るワケや」

「ええまあ、後から考えたらの話しですけどね、まあ、尋常ではないですわね…」

「なっ!?尋常じゃないわな!?良かったーぁ!そこは解ってるんや?」

「ええまあ、一応…」

「んじゃまあ、取り敢えずは刃物を遠ざけるとこから始めましょか?」

「………」

「無理?」

「いや、まあ、どうでしょうかねぇ…」

「じゃあ、取り敢えずは明日来て!?で、休み明けも来てな!?休み明けに来てなかったら俺、ドキッとするから、な?」

「はい、じゃあ明日…」


「ありがとうございました」と挨拶をしてから、K診療所を後にした。


なんだかんだと甘えてんなあ…。俺…。

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